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2005年2月9日水曜日

日本 VS 北朝鮮

日本中が大騒ぎの、W杯最終予選第1戦「日本VS北朝鮮」。
私も見ました、自宅のテレビで。

代表の試合を見ていると、いつも襲ってくる強烈な睡魔と闘いながら、なんとか前半を見切りましたが、ハーフタイム中に力尽き、意識を取り戻した時は後半20分。
なんと、1対1じゃないですか。
北朝鮮はどうやって得点したんだ?
高原と中村はどこから出てきたんだ?
と思いながらも、「まぁ、イイか」と考え直し、何とか眠気を覚ます事に力を注ぎます。
その後、判で押したようにくり返される退屈な日本のサイド攻撃に耐え抜き、無事試合終了を迎える事が出来ました。

結果は2対1で日本の勝ち。
テレビ朝日の画面には、デカデカと「日本劇的勝利!」とスーパーが出ています。
アナウンサーも、解説者も、「素晴らしい!」「よくやった!」と絶賛しています。
試合を終えた選手達も皆、誇らしげな顔をしています。
でも、私は思うのです…「ひどいモンだ」と。
「ひどい」というのはちょっと言葉が過ぎる気がするので、「素晴らしくはない」「もうちょっと何とかしようよ」と言い直す事にしましょう。

実を言いますと…ここ最近、いやここ何年か、代表の試合を見ていても心の底から「頑張れ!」と応援する気になれないのです。
以前は本気で応援していたのです。

メキシコW杯を目指していた森孝慈監督率いる日本代表。
サッカーがまだマイナースポーツだった頃、満員になった国立競技場に興奮し、テレビにかじり付いて応援したものです。
ジョージの日本帰化に大喜びし、木村和司のフリーキックに歓喜し、石神のクリアミスにガックリと肩を落としていたのです。

さらに、代表に初の外国人監督オフトを迎えて臨んだアメリカW杯予選。
これまでの「蹴る!」「走る!」「頑張る!」というサッカーから、ガラリと変わった日本のサッカーを見て、「おぉ!サッカーやってる!」と感動したのを思い出します。
それに加えて、カズ、ラモス、柱谷などをはじめとする、濃いメンバー構成。
彼等のプレーしている姿を見て、とっくに現役を退いている自分の中に熱いものがこみ上げてきたのは内緒です。

そして、加茂監督が「ゾーンプレス」「モダンサッカー」という言葉をひっさげて挑んだフランスW杯予選。
そのころの自分は、「むしろ、勝たない方が良いんじゃないか?」という思いがチラチラと顔を出すようになってきました。
それでも、まだかろうじて「ガンバレ日本!」とは思っていましたし、骨折した足を引きずっての中山の炎のゴールには感動しました。
その反面、城彰二や中田英寿には何か違和感を感じつつ、アトランタ五輪以降、輝きをなくしてしまった前園とともに「若い」選手達に異質のモノを感じていたのです。

この心変わりは、自分でも不思議でなりません。
自分は非国民なのか、相当なへそ曲がりなのか、それとも世間一般の人とは同じ考え方が出来なくなってしまったのか…
自分なりに考えると、それなりに理由は見つけられます。
簡単に言うと「心」が動かされないのです、最近の代表には。

オフトジャパンまでの日本の選手達は、明らかに自分たちが世界レベルではないと自覚していました。
それを十分承知した上で、「世界レベルの表舞台に出たい!」「俺たちはサッカーがうまくなりたくて仕方がないんだ!」「サッカー愛してるぜ!」というガツガツした気持ちがプレーに表れていたのではないでしょうか。
ブラジル人のラモスにしても、ブラジルでプロ契約をしてそれなりの働きをしてきたカズにも、そんなギラギラしたものを感じる事が出来ました。
それに加えて、闘将柱谷や、カニばさみの都並、アジアのカベ井原や、ウドの大砲高木、地味な汚れ役森保にも「心」を動かされっぱなしだったのを記憶しています。
オフトのサッカーに影響され、どんどん変化していく代表チームと個々の選手。
その変化を彼等自身が本当に喜び、楽しんでいたのではないかと勝手に解釈していました…というか、そう思ってしまうほど、気持ちが入っていたのだと思います。

そして、今の日本の選手達。
みんな同じような色の髪の毛と、どこかで見たようなヘアースタイル。
イタリアで活躍中(オッと、活躍中ではないか…)のあのお方に至っては、奇抜なファッションで成田に颯爽と登場したり、自身のセレクションCDを発売したり、色々と迷走しているようですが…
「オレ、結構サッカーうまいぜ!」「オレ、有名人?」「オシャレにも気をつけなきゃ!」なんて事を考えていないとは思います(というか願っています…)が、そんな雰囲気を感じてしまうのです。

それに加えて、マスコミとサポーターと呼ばれる人達。
日本のサッカーが、世界の上位に位置しているのが当然だと言わんばかりです。
前回の日韓W杯でベスト16に進出したことで、その勘違いにはさらに拍車がかかり、ドイツW杯ではベスト16は最低ラインだとかいう雰囲気になっています。
自分はこう思うのです「オイオイ、ちょっとまて」と。
日本サッカーのレベルは、そんなに高くないぞと。

確かに森ジャパンの頃にくらべると、そのレベルは格段に上だと思います。
でも、それは過去の日本と比べての事。
世界レベルで見れば、「その辺の国の1つ」程度のレベルでしかないのです。

最近では、数名の選手が海外のチームと契約し、現地のチームでプレーしています。
こんな事も、昔は考えられませんでした。
奥寺がドイツに行く事になり、日本中(いや、日本中ではなく日本のサッカーファンですね、マイナースポーツでしたから…)が大騒ぎになったのは遠い昔の話しです。
でも、外国人枠を使っているのに、本当に活躍してくれている選手はどれだけいるでしょうか?

ナカータは、フィレンツェでは「ヤツはサッカーではなく、ファッションにより多くの興味があるようだ」と囁かれているようです。
また、中村に至っては「ゴールに絡んだ!」という報道が日本で盛んにされていますが、そのほとんどはセットプレーから生まれたもの。(もしくはゴールの前の前の前のプレー?)
流れの中からのプレーこそがサッカーだと思うのですが、そのようなプレーは90分のうちに1~2回あるかないかのようです。
小野伸二には密かに期待しているのですが、チームのために自分を犠牲にするという日本人の心意気を存分に発揮しているため、その能力を十分に発揮していないのでは…
噂で終わった宮本に至っては、移籍先とされるチームの監督が「ミヤモト?知らないなぁ…でも、日本人なら、たくさんお金を持ってきてくれるんじゃないか?」とコメントしたとかしないとか…
その他の選手に関しては、「頑張ってるかな?」という程度です。
中には、なかなか試合に出られない選手すらいます。
そんな日本人選手達、果たして世界の上位に顔を出すような代表の中心選手なのでしょうか?

そして、現在(最近)の代表チーム。
テレビ観戦をしていて、猛烈な睡魔に襲われるのは、そのゲーム展開のせいだと思うのです。
今の代表の武器は?
たいていの解説者はこう答えます。
「クロスとセットプレー」

セットプレーに関しては、先ほども書きましたが、サッカーであってサッカーの本質ではないと思っています。
制止したボールを、ノープレッシャーで蹴れるのだから、ある程度イメージ通りになって当たり前。
というか、ある程度のレベルのチームであれば、セットプレーがチャンスになるのは当たり前の事。
流れの中で、相手のプレッシャーを受けながら、瞬間の判断で相手のウラをとるのがサッカーの魅力。
そういった意味で考えると、セットプレーを「武器」として大々的に出されてしまう代表の攻撃力の低さを物語っていると思うのですが…

もう一つの「武器」である「クロス」…
「クロスボール」「センタリング」と色々な言い方はありますが、サッカーにおいてサイドからのボールというのは、ディフェンスにとって非常に守りにくいのは事実です。
ディフェンダーにとって視界の確保というのは絶対です。
ボールとマークする相手選手を、常に同一視野に入れる事を要求されます。
ボールに気を取られている間に、マーカーがディフェンダーの視野から見えない所に素速くポジションチェンジする事を「消える動き」といい、優秀なストライカーには必要不可欠な要素の一つです。
また、ボールばかりに目がいってしまう選手の事を「ボールウォッチャー」といい、ダメな選手の代名詞となっています。
さて、サイドからのボールが守りにくい理由はココにあります。
自ゴールを背にして、正面にボールがあれば、ボールとマーカーを同一視野に入れるのは簡単です。
しかし、ボールがサイドにあると話しは変わってきます。
右サイドにボールがあって、マーカーが自分の左手方向にいたらどうでしょう?
カメレオンやシマウマでなければ、両方を視野に入れるのはむずかしいでしょう。
それを少しでも楽にするために、身体の向きを工夫して視野の両端に入れるようにするのですが、守りにくい事は確かです。
ましてや、サイドの選手がドリブルで中に切り込んできたりしたら、その対応に出なければなりません。
当然、背後のマークすべき選手は視界からは完全に消えてしまいます。
そこにグランダー(ゴロ)のボールをあわされると、フリーでシュートを打たれる事になってしまいます。

しかし、現在の代表の「武器」といわれている「クロス」はそのようなものとはちょっと異なります。
クロスを上げる位置はタッチライン際で、中にドリブルで切り込んでくる事はほとんどありません。
しかも、ボールは浮き球です。
遠い位置からの浮き球のセンタリングに対応するには時間的な余裕があります。
完全にボールを奪ったり、きれいにクリアする事が出来なくても、相手に身体を密着させる事で、簡単にシュートをコントロールさせないようにする事も可能です。
さらにいえば、たいていセンターバックには、この空中戦に強い選手を置きます。
ですから、浮き球のセンタリングをキレイに決めるためには、「マークがずれた瞬間」に「出来るだけ速く」しかも「正確にコントロールされた」ボールを上げる必要があります。
その上、浮き球を正確にミートするシューターの技術も必要となります。
アレックスと加地のクロスがこの条件を満たしているとは思いませんし、ゲンク鈴木と玉田が空中戦に絶対の自信を持っているとも思いません。
それでも、愚直にクロスを上げ続けるアレと加地。
また、その二人にボールを供給し続ける中盤の選手には何も感じられません。

日本はどこを、何を目指しているのでしょうか?
アジアでそこそこ勝てるチームを目指すのであれば、この方法をゴリ押ししていれば、時にはアジアチャンピオンになれる事もあるし、運良くゴール前でジャンプした頭にボールがヒットしなければ途中敗退という事もあるでしょう。
アジアには、ドイツやオランダ、デンマークみたいにバカでかい選手がゴール前で守っている事も少ないでしょうから…

さて、今日の試合では北朝鮮が日本のやるべきサッカーを目指していたように見えました。
日本のやるべきサッカーとは、簡単に言えば「身体能力に頼らないサッカー」。
正確なボールコントロールと、タイミングで相手ディフェンスラインを崩すサッカーを目指さなければ世界の舞台には出て行けないと思います。
シュートチャンスを演出するまでの北朝鮮のボールの動かし方は、日本も大いに参考にすべきだとすら思いました。

日本のボール回しといえば、最終ライン付近のノープレッシャーの地域でのみ。
前線に入るボールは、ディフェンスラインからのロングボール。
最終ラインで時間をかけて回して、回してロングフィード…「どうせロングボールを入れるなら、もっと早く入れれば?」と思います。
たまに中央にグランダーでボールを入れても、ちょっとプレッシャーを受けたらすぐに最終ラインにもどすか、サイドに逃がす。
そして、サイドの浅い位置からアバウトなクロスボール。
これは、身体能力をウリにしていた頃の韓国やドイツの戦い方。
いや、当時の韓国やドイツの方がスピードがあったような気がします。
こんな試合を見ているのですから、睡魔に襲われるハズです。

対する北朝鮮は、中央付近の高い位置の選手へグランダーのボールを入れ、そこからダイレクトやツータッチでショートレンジのパスを展開。
また、タテパスを受けた選手がちょっと後ろに位置する選手へボールを落としたり、ヨコバスを入れている間に、後方から次々と選手が上がってきて、より厚みのある攻撃をする。
一つでも多くパスコースをつくり、ディフェンスに的を絞らせない。
そして早く正確なボール回し。

こんなサッカーこそが日本の目指すサッカーであるべきだと思うのですが…
しかし…今日の北朝鮮に足りなかったのは「正確さ」。
残念だったのは、所々でパスがずれたり、コントロールをミスしたりしてボールを失う場面が多かった事です。
「残念」という言葉が適切かどうか分かりませんが、日本全体を覆っている「オレ達のサッカー強い!」という勘違いに気付くためには、北朝鮮のような国にガツンとやられる必要があると思うのです。
ドイツに手も足も出なくても、「やっぱりドイツは強いなぁ」で終わってしまいました。
一昔前のドイツにあった「身体的な強さ」ではなく「巧さ」にやられたのに…
その点、格下だと思って(勘違い)いる北朝鮮にチンチンにされれば、ちょっとは目が覚めるのではないかと期待したりもしたのです。

でも、勝ってしまいました。
それも無様な勝ち方で。
確かに勝つ事は重要です。
特に今回の勝利は、W杯へつながっています。
ワールドクラスの相手とガチンコ勝負をするという「経験」は何事にも代えがたいモノです。

それでも、思うのです。
「勝って良かったのかなぁ…」「こんなサッカーで世界に出るのは恥ずかしいなぁ…」ましてや選手達も、マスコミも、サポーターと呼ばれている人達も自分たちのサッカーがなかなかのモノだと勘違いしている状態では、世界に恥をさらしにいくようなものなのでは?
いや、一番悲惨なのは、このまま勘違いし続けていたら、日本のサッカーの進歩は何十年も遅れてしまうのではないかという事です。

やっぱり、日本人の国民性はサッカーには向かないのだろうか?
日本の解説者の人達の本音はどうなんだろう?
こんな事を考えているのは、自分だけなのだろうか?
以上、非国民の毒舌でした…

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